たたずむ
奈良の二日目。薬師寺の駐車場に車を止め、ざっと境内を眺めて電車で奈良市内に移動。ならはく(国立奈良博物館)で開催中の「快慶 日本人を魅了した仏のかたち」に入場した。仏像そのものにはそれほど興味はないが、せっかくの機会なので観ておいてもいいだろうという浅はかな動機に過ぎない。秋にとうはく(国立東京博物館)で開かれる「運慶」展と合わせて、仏教美術に関する大きな催しらしい。ならはくの隣に建っている古風な建物(なら仏像館)が、1894年完成の旧・帝国奈良博物館だったことを初めて知った。
戻って薬師寺。ちょうど食堂(じきどう)再建の落慶法要の最中で、招待客で賑わっていた。一般公開は7月からなので中の様子は分からない。
奈良・薬師寺「食堂」の再建工事が完了 報道陣に公開
http://www.asahi.com/articles/ASK595215K59PTFC00V.html
対照的にひっそりとしていたのが西塔の公開。以前も入ったことがあったが、様相が一変。2年前に"内装"を一新していた。解体修理中の東塔が国宝であるのに対して、消失した西塔を昭和末期に再建した"模造品"に過ぎないともいえるが、時間が経てば位置付けも変わるのか。東塔に比べて30cm高く造ったのは、木材が締まって500年後に同じ高さになることを計算した、と聞いたことがある。つまりはそんな時間軸上にある建築物なのだろう。
西塔
http://www.nara-yakushiji.com/contents/tokubetukoukai/saitou.html
西塔内陣
http://www.nara-yakushiji.com/guide/hotoke/hotoke_seito.html
> 昭和56年(1981)に再建された西塔には、東塔と同じく釈迦八相のうち
> 後半の四相(果相)にあたる諸像が安置されています。もともとは、
> 塑像の形でお祀りされていましたが、享禄の兵火で西塔と供に焼失
> してしまいました。
> 現在は彫刻家で文化勲章受章者の中村晋也氏によって、平成27年6月に
> 新たに奉納された群像形式の釈迦八相像が祀られています。
語弊たっぷりに私見を記すと、薬師寺は商売がうまい。たくさんの金を集めて次々に設備投資を重ね、集客力を増している。これと対極にあるような感がしてならないのが、次に訪れた不退寺。在原業平をまつった古寺は、クルマがようやく通れるような道をたどった突き当たりにひっそりと建っていた。年に一度の公開日に当たると知り、訪れてみた。寺を象徴する建物「多宝塔(たほうとう)」は上層の飾りが落ち、下層だけになっていた。修復するだけの金を集めることができないのだろう。
両方の寺でたたずみ、どちらの"生き方"もあるんだなぁと感慨深く、青く澄んだ空を眺めていた。
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